第5回びわこ臨床研修ネットワーク

 

お知らせ

 第5回のびわこ臨床研修ネットワーク講演会では、大津市民病院、草津総合病院の当番で「救急研修の更なる充実のために」をテーマとした講演会を企画していただきました。今回も多数の演題をいただき、楽しみにしています。各病院での日ごろの研修成果を披露され、お互いの刺激をとなることを期待しています。

 1年目の研修医と救急当直をしていてまず気になるのは、問診→診察→検査→病名診断→治療といった基本に忠実に診療をすすめるために、患者さんへの必要なアプローチがよく後回しになることです。たとえば脱水状態であるとわかっている患者さんに、その原因を調べて結論がでてから点滴をする。脱水という病態であるかどうか、その程度も評価せずに病名の診断に進む。これには患者さんの訴えや「見た目」を重視する看護師のほうがイライラさせられているようです。

 内科領域の主訴では、検査をしたから確定診断できるわけではないという現実を体験せずに卒業しているから仕方ないのかもしれない。私もおそらくできていなかったのでしょう(忘却のかなたですが)。「救急患者さんの診かた」なんて学生時代はともかく研修医時代にも教わった記憶はありません。今は研修医には、「どんなに軽症に思えても患者さんに対して、生物学的ニーズ(バイタル)と精神的ニーズ(不安と受診への期待)をまず把握して、各々にケアを施しながら、診断に必要な時間を稼ぐのだ」と教えることにしていますが、これがソツなくできたらもう指導医レベルをも超えているかもしれません。

そこで特別講演の演者は丸藤 哲(がんどうさとし)氏、かの「臨床研修 救急一直線」の編者であり、北大救急医学の教授、救急部・集中治療部部長です>(⇒プロフィール)。北大附属病院の救急部スタッフの皆さんが書かれたこのテキストは大変充実していて、上に述べた観点が重視されています。出版後すぐに当院の救急センター医局にも配備されていました(⇒書評)。救急現場で研修医はどんなことを学べばいいのか、指導医はどんなことを教えればいいのか、しっかり網羅されています。

まず総論で、救急診断学と救急治療学の特徴として、丸藤氏が以下の5点をあげています。

  • 対象者の不確実性
  • バイタル重視
  • 全身を診る必要性
  • 緊急度・重症度の判断で優先順位決定
  • 診断と治療の同時進行

 そして第5章の「主要症状と診断・対処法」にそのコンセプトがよく現れていて、症状ごとに、1.「まず考えること、行うこと」、2.「絶対見逃してはいけない疾患、病態」、3.「どのような疾患、病態を考えるか」、4.「診断のために必要な問診、所見、検査」、5.「具体的対処法」と進み、6.「してはいけないこと」も書かれている。

 教えるときには指導医もこれを参考にして、1から6の順に研修医に質問してみてはどうでしょう。なんとなく一人前の指導医らしくなれる気がしませんか?この思考プロセスは、救急に限らず日々の診療に役立つと思います。

  • 「まず考えること、患者さんにしてあげることは何?」
  • 「この症状で、絶対見逃してはいけない疾患は何?」
  • 「鑑別診断は?」
  • 「じゃあ、そのための問診と検査はどうしよう?」
  • 「で、もし○○○だったら、どう対処するの?」
  • 「ところで、こういうときに絶対してはいけないこと、何か知ってる?」

 

 最後に、「救急とはシステムである」と述べられる先生に、臨床研修を意識した救急部のシステム作りについてご意見を伺いたいと思います。

 

ネットワーク事務局 中村隆志
(済生会滋賀県病院 診療部長 救命救急センター長)