■第2回指導医連絡協議会

 

「研修医2年目の診療業務の安全管理、特に当直での単独診療」


 1年目に関しては単独でしてはいけない行為等を具体的に制限しているが、2年目の研修医は規則上、単独診療が許されており具体的に決まっていないというのが現状である。安全管理の面では当然リスクがあり、それをどのようにカバーしていくのかが難しい。リスクを負うのが嫌ならば指導医が全部見ることになり研修にならない。逆に研修医を信頼し、自分が責任かぶるよといいながら具体的には研修医にここまでやらせるというものも無く、病院の責任もあやふやなままであるといのが現状であろう。
  今後は研修指定病院としての責任体制や研修プログラム自体の責任ある管理体制が問われる可能性が高い。各施設の指導医のお考えを尋ね、現状の問題点を挙げ、対策を探った。

Q:どのような問題点、トラブルが考えられますか?

 多くの病院では2年目の研修医は併直という形をとっているが、病院やプログラムの責任は明確でない。ルール作りが難しく、事故が起こったときの責任や、どのぐらい研修医に任せるかは指導医に委ねられていることが多いのではなかろうか。病院としての責任を明確にするために、どこまでさせるとか誰が責任を負うのか、というルールを決めることはできないのだろうか?
  実際、内科は単独で当直業務がある程度までは可能だが、一次の救急患者が押し寄せる状況で患者が帰宅するまでに治療方針を全例チェックするのは物理的に無理である。研修医に「風邪ですけど薬出しといていいですか」といわれても、果たしてそれが本当に風邪かどうかもわからない。最近はインフルエンザを風邪と診断して感冒薬を処方して帰宅させて、他院で診断を受けたあとクレームがくる時代である。解熱剤だけ処方して帰宅させ、後に腎盂腎炎が重症化してから再来院するとか、めまいの患者を帰宅させ、後に小脳梗塞が判明するといったケースの可能性も想定される。
  研修医の先生が単独で処方した場合でも、病院は診療責任を、指導医にも求めている。指導医が患者を直接診ておらず、発熱くらいで連絡も受けていない場合は、診療責任といわれても困るだろう。患者―医師関係が発生していなければ法的責任を問えないのではないか。

Q:指導医に相談するタイミングをどのように説明すればよいでしょう?

 「迷ったときには相談しろとか手に負えないと思ったら相談しろ」とか言うが、研修医はこれでいいと思ってやっている。つまり手におえていると思っている。しかし後からみたらここがおかしい、あそこがおかしいということが出てくる。かといって全部相談してきたら、「何を全部相談しているんだ。自分で判断するトレーニングも必要だ。」ということになる。研修医にヒヤリングしたときにはその境目がわからないようである。
  その境目をわかりにくくしているのは、指導医による違いや科による違いであり、ある程度の標準化が望ましいのだろう。昼間はまだ誰かに相談しやすい環境にあるが、夜の場合は相方の指導医の接しやすさにもよる。夜中に起こす、起こさないというのは永遠の問題として残る。 起こすと機嫌の悪い指導医がいる(悪く見える?)、この先生は呼んだら来てくれるが、この先生は呼んだら怒るということがあるらしい。
  しかし、お互いのコミュニケーション次第で決まってしまうのは体制としてまずい。せっかくの研修医の情報発信を切っていることになり危ない。呼ばれて対応しなかった場合は3分の2は指導医が責任を負うことになるだろう。

Q:組織的な対策例はありますか?

 ある病院では、内科については併直として一次救急のみ単独業務をある程度させ、患者が帰宅するまでに指導医に一度報告させるよう取り決めた。さらに翌朝、単独診療した患者があればカルテ上で内容を再チェックして署名することで、監督責任をはっきりさせ、また改善点があれば研修医にフィードバックをすることにした。外科系の患者も診るが単独業務とはせず、必ず指導医の直接監督の元、原則午前零時までとすることも決めた(リスクだけでなく、深夜に研修医に手技をさせる余裕はないであろう)。病院としてのルールを作れば、この体制で発生した問題は病院の責任でもある。リスクマネジメントのインシデントレポートと同じで、早く全員にフィードバックして早く学んでもらうシステムづくりをしておかないといけない。例えば小さな失敗についても1週間単位くらいためて、ミーティングで全部フィードバックできるようなことをできればしたい。失敗から学ぶコミュニケーションを早くして、避けられる失敗を可能なだけ避ける体制が必要である。

Q:紹介患者、入院の決断などについての指導は?

 入院させるかどうかの判断は指導医を呼ぶタイミングのひとつであるといえる。救急車は最初から一緒に対応すると決めている施設がある。またある施設では診療所の先生から入院目的でご紹介のあった患者様の入院の適応・不適応に関しては一切判断をするなと指導している。地域医療で病診連携で一緒に地域の患者を診ているとしたならば、その先生のその段階での判断も含めて診療を引き継ぐよう心がけるべきである。診療所よりも十分な検査結果を根拠として病態を再評価する。予想以上に進行が早くても、あるいは回復が早くても、一晩入院し経過を観察あるいは必要に応じて治療をした後でなら、病態把握や判断、患者説明がしやすい。

Q:帰宅させる場合にも注意が要りますね?

患者説明の仕方も教えておかないといけない。患者さんを帰宅させる場合などは特に、その説明の仕方を教えておかないと、安心させすぎては悪くなっても来ないということがあるので、言いかたが難しい。ある施設では、「調子が変わらなかったら明日来るように、変わったら救急を再診するよう」の文言はカルテに必ず入れるように指導している。

Q:研修医が単独で判断する場合のアドバイスはありますか?

研修医は検査が甘くなりがちである。救急受診患者の多くは、実際の緊急度や重症度はともかく、救急を受診するほど心配だからわざわざ救急に来ているので、その不安感に対応する慎重さが必要である。通常の診療と同じような見方をせず、病態把握とともに、患者の不安や心配に答えられる客観的な検査結果を確保することが重要である。臨床症状からは予測できない異常が見つかる場合もあるし、その時点で仮に異常が無ければ、予想以上に進行が早い、あるいは予想外の展開をとった場合でも、その時点での医療判断の妥当性の根拠を確保できる。

Q:オンコール医での対応でもよいのでしょうか?

去年の今頃、厚労省の指針が出て、1年目は一緒に当直しなければならない。2年目は研修医に当直させておいて家で待機していいことになっている。 一緒に当直する必要はないということになると、なおさらしっかり教えておかなければいけない。30分以内に行ける体制を作っておけばいいということである。しかし本当はその体制では甘いのではないか。科によっては一緒に泊まっていないと対応できない。昔のローテイトがあった時代の話であるが、内科1年、外科半年、麻酔科半年のトレーニングで、1年でそこそこ、2年でかなり出来ていたように思う。当直は月に8回ぐらいやっていた。今は週一回で、労働基準法の時間制限などで、トレーニングの成果が上がりにくい。経験の場数が増えない。しかも今はいろんな科で3ヶ月とか1ヶ月で細かくて、間口が広い分、それぞれの科での診療技術や診断能力を任せられるレベルまで高められないものも多く、3年目以後の後期研修の重要性が認識されつつある。

 

<参考資料>

卒後医学教育における職業上の法的責任に関する諸問題
Kachalia A, et al. Professional Liability Issues in Graduate Medical Education.
JAMA 2004;292:1051-6.

 

【要旨】

研修医(レジデント)、指導医、研修指定施設は安全で適切な医療を患者に提供する責任を分かち合う。研修指定施設だからといって、法律は医療の質が低下するのを許すことはない。

研修医の責務:患者の権利擁護の観点から、一般的に指導医と同じレベルの標準的医療を行うことが求められている。この原則によって、研修医が指導医に積極的に指導を求め、指導医は積極的に指導するという体制が促進される。専門分野のトレーニング中であればその専門分野の平均的専門医に期待されるのと同じ医療水準を要求されうる。何か不確かな状況や問題が最初に起こったときに、指導医に助けを求めることが奨励されている。

指導医の責務:自分が行う医療行為に対してだけでなく、自分が指示した医療行為に対しても医療過誤のリスクを負担している。さらに、一緒に働く研修医の過失に対する連帯責任、または監督義務不履行(過失行為の見落とし)に対する直接責任を問われるかもしれない。どのような監督が十分適切であるかについては法律上定まっていないが、世間での患者の安全に対する懸念の高まりから、裁判所がより高い監督基準を要求するようになると予想される。

オンコール医師に対する責務

研修医から相談がなかった場合は、患者―医師関係が確立していないオンコール医の法的責任は問いにくいが、病院とオンコール医師との契約内容にも左右される。
施設および研修プログラムの責務:医療を安全に提供するシステムの管理を含め、提供する医療および職員の過失の両方に対して法的責任を負っている。研修医の労働時間制限や医療事故の原因ならびにそれを防止する機構としての研修システムの役割に対する理解が深まれば、卒後臨床研修プログラムに対する法律上の要求が増えてゆくかもしれない。過去においては、指導医が研修医を直接監督・管理することで病院はその連帯責任を免れるという立場を、病院がとることが可能であったが、実際は病院に連帯責任が転嫁されることがより一般的で、指導医よりも連帯責任の賠償請求対象となりやすい。